これまで20年以上にわたり、日本のお客様とともにフィンランド各地で視察を行ってきました。私たちにとって、様々な分野の専門家と視察の計画を練っていく時間は非常に興味深いものであり、その一つひとつの経験が、私たちマイスオミにとっても新しい発見の連続です。
日本とフィンランドの文化は異なる一方、両国とも少子高齢化や福祉、教育、サステナビリティといった共通の課題に向き合っています。それらの課題に対して、両国がどのように考え、どう行動しているのかを学びあえる視察は、その違いと共通点を肌で感じることのできる貴重な場です。
訪問中のお客様の反応は実に様々。「こんな方法があるのですね」と驚かれる方もいれば、思わず苦笑したり、少し批判的なコメントをされる方もいます。しかし、それこそが自然な反応だと思います。自分の価値観と異なるものに出会えば、まず違和感を覚えるのは当然です。しかし視察後は「なるほど、あれにもこんな意味があったのかもしれない」と気づかれる方が多いのです。
印象に残っている視察があります。15年ほど前に日本の老人ホームの管理者の皆さまと訪れたフィンランドの老人ホームでのことです。その老人ホームにはプールが併設されており、一人のお年寄りが浮き輪をつけて静かに水に浮かんでいました。その方は足が不自由で、プールは唯一自分の力で動ける場所だったのです。

すると、日本の訪問者の方々は少し驚かれ、「なぜ指導をする人がいないのですか?」「泳ぎ方を教えないのですか?」と質問されました。フィンランドでは、本人が自分のペースで楽しみ、「自由に動ける時間」「自分の意思でどう過ごすか」がより尊重されているのです。一方、日本では「十分にケアされていない」と感じる方も多いでしょう。
どこまでを支援し、どこからを本人に委ねるのか、その線引きの違いこそが、フィンランドと日本の文化の違いを映しています。
視察の醍醐味は、こうした違いに触れ、「同じ課題にも別のアプローチがある」と気づく体験です。フィンランドの方法がそのまま日本に合うとは限りません。しかし、視察を通じて自分たちのやり方を見直し、新しい発想を生み出すきっかけになるのです。
そして私が何より嬉しいのは、お客様の表情がふと変わる瞬間です。まるで「禅の悟り」のような静かなひらめきの瞬間、何か非常に重要なことに気づいたことがわかる瞬間です。それは新しい考え方の始まりであり、私たちマイスオミにとっても何よりの喜びです。

原文:マイスオミ代表 Hanna Jämsä
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